FTC2024成果発表会参加/「ソーラーシェアリング実証実験」のご紹介(新聞掲載)

1月31日から2月1日にいわき産業創造館で開催されたFTC(Fukushima Tech Create)2024成果発表会で、「太陽光×光拡散板×農業×林業を組み合わせたソーラーシェアリング実証実験」について発表・展示いたしました。(開催概要等ページ下部に記載)

*「先導技術事業化アクセラレーションプログラム」において15:35から発表いたしました。


太陽光×光拡散板×農業×林業を組み合わせた

ソーラーシェアリング実証実験 とは


光拡散板と太陽光パネルを設置した木製架台の下で、農作物を栽培する実証実験を行っています。

通常の太陽光パネルは日光を通さないため、太陽光パネル下部は太陽光が届きづらく農作物の栽培において不利になってしまう場合が多くみられました。しかし、太陽光の照射を均一に拡散する「光拡散板※1」と組み合わせることによって、太陽光パネル下部に、適度な日光を取り込むことのできる半屋外のスペースを作り出すことができます。

そこで、光拡散板と太陽光パネルを組み合わせた屋根の下で農作物を栽培し、光環境の観測や農作物の成長状況を調査することにより、営農型太陽光発電※2への有効性の実証実験に取り組んでいます。


※1 光拡散板「ひかり屋根」(ひかり屋根株式会社)

太陽の光を「そのまま灯りとして使う」ことをコンセプトにした光拡散天窓を用いる照明システムです。紫外線をカットし、強い反射グレアを均一に拡散し理想の明るさを提供します。

公式ホームページ https://hikariyane.com


※2 営農型太陽光発電について

営農型太陽光発電は、一時転用許可を受け、農地に簡易な構造でかつ容易に撤去できる支柱を立てて、上部空間に太陽光発電設備を設置し、営農を継続しながら発電を行う取組です。作物の販売収入に加え、発電電力の自家利用等による農業経営の更なる改善が期待できます。(農林水産省ホームページより)



木製架台について

接着剤を使用せず、木材をビスで留めつけるNLT合わせ梁を用いて、比較的安価な木製架台の開発に取り組んでいます。また、福島県産の木材を使用することで、地域材の利用を促し林業の活性化を目指しています。


木製架台に求められる強度の検証のため、使用する木材の品質や固定荷重の検証も行っています。

デザイン・仕様等の検討パース・模型(作成:日本大学工学部)


防腐対策について

「肥料や薬剤による著しい腐食」「架台の主要な部材に構造上致命的な均一腐食による減肉、または、構造上致命的な腐朽」「環境に応じた、適切な防食処理」などの要素に対応するため、「造膜系セラミック塗料※2」 を採用しています。


※2 造膜系セラミック塗料「ガイナ」(株式会社日進産業)

塗布するだけで遮熱+断熱+αの効果を有する塗料です。木質建屋の水道施設では結露対策用の塗料を使用しています。

公式ホームページ:https://www.gaina.co.jp

※水道施設事例ページhttps://panel-log.com/case/public-facility/14594


営農性の検証について

実際に、農作物を定植し検証を行っています(Ichido株式会社)


定植する植物は、花木・一年草・野菜のそれぞれを東西南北に配置しました。また、大型トラクターにも対応できる設計としています。

太陽光の照射が均一に拡散すること、 雨水の均一な灌水の結果、太陽光発電パネル下部の農作物に好影響があり、また炎天下での農作業環境の改善なども期待できる反日蔭による効果も検証しています。冬季(10月〜1月)の実施でしたが、2024年1月19日時点枯れた植物はありませんでした。


光環境計測について

光環境だけでなく、土壌の温度や水分量も計測しています。

光環境計測の様子・グラフ等(福島大学)


測定により、架台下部の四面 ( 東西南北 ) 照度が均質になることが判明しました。また、光の波長に対しては、波長が短くなるに従って、透過エネルギーが減少することが分かりました。透過波長による作物の育成に与える影響などについては、今後引き続き調査していきます。

架台下の土壌水分については、架台下において直射日光が入らない北側の土壌水分量が多いこと、つまり、保水力が向上することが分かりました。土壌温度は、架台下において直射日光が入らない北側は、南側に比べて 2° C 温度が低く、これらの影響に関しても、今後さらに調査を進める予定です。


経営的視点について

工学・農学の2つの視点により、単位面積当たりの発電量を従来よりも増やし、かつ太陽光発電パネル下部での営農効率性の向上、即ち、それぞれがハイクオリティで両立できるかどうか、検証しています。

費用対効果(イニシャルコスト)において検証すると、下記の結論が得られました。

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1 遮光率により、導入する設備がことなる。

2 基本的に遮光率が大きくなるほど、導入費用が高くなる傾向がある。

3 本提案の建設コストは、発電設備が含まれていないが、既存市場の価格と比べて遜色がない ( 競争力がある )。

4 基礎の作り方に懸念が残るが、普及推進に向けて精査すれば、さらにコスト低減が期待できるため、十分に競争力を得ることができる。

5 また、スケールメリットによるコスト低減も期待できる。

6 高付加価値化という視点では、他を寄せ付けないメリットがあると考えられる。

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事業化に向けて

木製架台の耐久性 ( 工学的視点 ) や営農性 ( 農学的視点 ) に関して、実施時期が冬季 (10 月 ~1 月 ) ということもあり、今後も実証試験を継続していきます。検証する際には、引き続き福島大学や日本大学工学部と連携して、科学的な検証を継続していきます。


「目指すもの」

・「食べ物」と「エネルギー」を自給する風景をつくることは、サスティナブルで近未来的な風景をつくること。

・ 分野の横断的な取り組みは、教育的な価値もある。

・ その場で調理までできれば、災害に強いインフラにもなりうる。



*この取り組みを1月31日(水)福島民報にてご紹介いただきました。


*事業体制

合同会社良品店:統括

ひかり屋根株式会社:(工学)光拡散板、灌水性能の検討

          (経営)テストマーケティングの実施

日本大学工学部:NLT合わせ梁の仕様検討、データ分析、デザイン

株式会社日進産業:木製架台の腐朽対策(塗料)

Ichido株式会社:営農に関する試験・調査

福島大学:物性データの取得(光環境計測)


*詳細資料はこちら→PDFダウンロード



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*Fukushima Tech Create(FTC)とは

「Fukushima Tech Create」は、Fukushima(福島浜通り地域)からTech(技術・サービス)をCreate(創造する・生みだす)するプレーヤーを増やしたい思いからスタートしました。

福島イノベーション・コースト構想推進機構(福島イノベ機構)が行う「Fukushima Tech Create」(略称:FTC)は、福島県浜通り地域等15市町村(*イノベ地域)における起業・創業にチャレンジをする企業・個人等を次の3つのエンジンにより支援しております。


【開催概要】

日 時|2024年1月31日(水)12:30~17:30 

    2024年2月1日(木)12:30~17:45※開催終了

会 場|いわき産業創造館(福島県いわき市平字田町120番地 LATOV6階)

内 容|ステージ(セッション+ピッチ 34社(者))、ブース展示 34社(者)、VC相談ブース 5社(インキュベイトファンド株式会社、株式会社デライト・ベンチャーズ、株式会社ANOBAKA、B Dash Ventures株式会社、株式会社Monozukuri Ventures)

主 催|福島県、公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構

共 催|復興庁

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Fukushima Tech Create 2024成果発表会ホームページ https://fukushima-inv-ftc.jp